苔(コケ)むすことが神々しい

敷栲(しきたえ)の枕に人は言問うやその枕には苔生しにたり 柿本人麻呂

 

苔(コケ)「むすことが神々しい」

先ごろ文化勲章を受章された

万葉集研究の第一人者である中西進さんが

昭和61年に苔(コケ)について書いた文章が

これから日本人が歩いていく道』(中西進)

という本に載っていました。

 

「ふつうコケは年月の久しいことばかりを意味するように思われるが、

コケむした果てに畏敬の念をもつことは、自然であろうし、

その段階で、ここに神聖さを認めることも不自然ではない。」

 

何時(いつ)の間も神さびけるか香山の桙(ほこ)杉の本(もと)に苔生(む)すまでに 鴨足人

奥山の磐(いわ)に苔むし畏(かしこ)くも問ひたまふかも思ひあへなくに 葛井広成

神名備の三諸(みもろ)の山に斎(いは)ふ杉思ひ過ぎめや苔生(む)すまでに

 

「これらを見ていると、単に年月の久しさばかりをいうとは思えないだろう。

神さびたものとしての畏怖を表象するものがコケであった。」

「コケむすことが神々しいこと、(中略)

コケのしとねこそ神座であった、というべきだろう。」

と書いてあります。

 

「苔生す」という言葉

国語辞典風には

苔が生えること。長い年月を経て古びること。

という意味になるようですが

すぐに思い浮ぶのは

君が代の歌詞ではないでしょうか。

 

「君が代は千代に八千代に

さざれ石のいわおとなりて

苔(こけ)のむすまで」

 

たしかに

苔むした岩もそうですし

神社やお寺、渓谷や里山の

風景の一部としての苔にも

長い年月の流れとともに

なにか神聖さを感じるような気がします。

 

それにしても

上記のトピック「むすことが神々しい」には

『万葉集』の歌がでてくるのは当然としても

ヘアモス(スギゴケ属)という

北欧の苔(コケ)にも言及されていて驚きました。